第4章 実力試験は実戦で
しのぶさんと話していた宇髄さんはいつの間にかふらっと居なくなっていて、鍛錬が終わる頃に迎えに来てくれた。
昨日と比べてだいぶ鍛錬らしい鍛錬ができてホッとしていたのだが、二人は何を話していたのだろうか。
"柱"になりたいわけではないが、柱同士で肩を並べて話せることが少しだけ羨ましい。
私は継子。それ以上でもそれ以下でもない。
もっと頼り甲斐のある継子になりたいと思っても家にいれば三人の奥様達がほとんどの家事などをやってくれている。せめて継子として実力を上げたいと思っても所詮継子。
柱としての彼の役割はわたしには考えられないほどのものなのだろう。
宇髄さんもしのぶさんも雲の上の存在なんだと感じると少しだけ近付いたと思った距離が物凄く遠く感じていた。
わたしは欲張りだ。
宇髄さんと打ち解けて、普段から優しく構ってくれることが嬉しくて"もっと"と思ってしまっているんだろう。
"もっと"とは何なのだ。
奥様がいるのに任務がない日は家にいればわたしに構ってくれる彼に嬉しく感じていたが、よく考えたらそれは奥様達からしてみたらわたしが独り占めをしていることに他ならない。
なのにもっと宇髄さんと一緒にいたい、宇髄さんの役に立ちたい、宇髄さんに褒められたい。
頭の中は宇髄さんで埋め尽くされていてそんな自分の状況が異常だと気付いてしまった。
たかが継子のくせにどこまで望んでいるのだ。
お風呂に入って天井を見つめたまま布団に横になっていると「おーい、ほの花。」と襖の外で宇髄さんの声がした。
それだけで心臓が跳ねるわたしは必死に胸を押さえて深呼吸をする。やはりこの胸の拍動はいけないやつだ。
(落ち着け、ほの花。宇髄さんは師匠なんだから。)
深呼吸をして、一度笑顔を作ると顔をパンパンと叩いて気合いを入れた。
「はーい、どうぞ!」
私は、ただの継子なのだから。