第25章 甘える勇気
俺一人で対処すると正直殴り殺してしまうことも考えられたから俺なりに考えていた。
それほどまでに苛ついていたし、ほの花のことになると見境がなくなるのは分かっていたので、ならば意図的に手を出せないようにしてしまおうと思った。
自分の立場を考えると、お館様、鬼殺隊に迷惑がかかることだけは避けたかったし、それを考慮するならば一番の得策は警察と連携をするということだった。
任務を終えると屋敷には戻らず、そのまま警察に行き、ことの次第を話して現行犯で逮捕して欲しい旨を伝えた。
一般人は一般人同士でやりやってもらった方が命の補償はできる。
こちとら鬼を相手に普段戦っているのだから、感情任せに戦ったら本当に殺してしまう。
力の加減ができる自信などあるわけがない。
自分の女を傷つけられたのだ。当たり前だ。
しかし、最初俺が警察に出向いた時、逆に怖がられたが、そこは持ち前の人当たりの良さで屋敷まで同行して、あの男が荒ぶった時点で器物破損と婦女暴行未遂で逮捕してもらう手筈を取り付けた。
そうと決まれば頃合いを見て、突入してもらおうと思ったのだが、あまりに頭のおかしい発言を繰り返すその男にほの花が俺の女だと分からせてやりたくなって思いっきり彼女に口付けてやった。
予想外のことをしてしまったが、まさに俺の考えた脚本通りに動いてくれた愚かなその男が荒ぶったところで玄関の隙間から覗いていた警察が雪崩れ込んできてお縄についたというわけだ。
「武田義晴!婦女暴行未遂、器物破損の容疑で署まで同行してもらおうか。奥様、お怪我はありませんか?」
「へ…??え、…?私?」
面倒だったので"妻に付き纏う男がいる"と伝えたことで一時的にほの花は妻と言うことになっているのだが、本人は知らないことなのでキョトンとして俺を見上げて動揺している。
「妻は大丈夫だ。暴行される前に俺が到着したからな。」
「そうですか。暫くこの辺りの巡回を強化しますので、ご安心下さい。」
「あ、え、っと、ありがとう、ございます…。」
未だに諦めの悪い糞野郎がほの花に向かって手を伸ばして、「僕の女を返せーーー!」と叫んでいるのを苦虫を噛み潰したような顔をして見つめる彼女を引き寄せてポンポンと頭を撫でてやった。