第25章 甘える勇気
ワナワナと怒りで震える義晴という男を前に毅然とした態度で見下ろす宇髄さん。
外に警察が待機していると言っていたと言うことは遅くなった理由は…そう言うことだろう。
それを考えただけでもポカポカと胸が温かくなる。
尚も、怒りをぶつけてくるその男と対峙してくれる宇髄さんがどれほど頼もしいか。
改めて感じている。
「ふ、ざけんな!僕のほの花を返せ…!このすけこましが!!」
「はぁ?!言っておくがな、お前が見たっつー女三人は俺の家族だっつーの!!俺はほの花一筋だわ!!」
「か、家族…?そうやって僕のほの花を騙して手篭めにしたんだろ…!」
「ああ、確かに俺はほの花を何度も抱いてるけど、俺の女だから抱くのは当たり前だろ。何なら昨日も抱いた!」
「ちょ、何言ってんの?!」
しかし、黙って聞いてれば、宇髄さんの発言の内容が売り言葉に買い言葉のように怪しくなってきたので思わず制止してしまった。
いつ抱いたとかそんなことを暴露してどうするのだ。
「お前はオカズにすることしかできねぇだろうけどな。俺はコイツを直に触れて、喘がせられんだわ。バーカ!」
「ふ、不埒な男だ…!!」
やめてくれ。
切実に。
何を言っているのだ。逆上させるだけではないか。それなのに一向に繰り広げられる舌戦が止む気配はない。
もうこの場にいることすら恥ずかしくなってきた頃、前にいた宇髄さんがチラッとこちらを見てニヤリと不敵な笑みを向けてきた。
何事か…と思った瞬間、腕を引っ張られて腰を引き寄せられたかと思うと唇に熱い感触が押し付けられて、目の前には美丈夫な宇髄さんの顔が広がっていた。
口づけをされていると知ったのはその数秒後。
さらに数秒後にはその人に見られていることが怖くて何かされるのではないかと身構えた。
それなのに宇髄さんは気にもせずにいつもの如く舌を絡ませてきたので頭を抱える思いだというのに。
「…貴様ぁっ!ほの花に触るなぁっっ!!」
そう言って宇髄さんに掴みかかろうとした時に玄関に雪崩れ込んできた制服を着た人たちに驚いて後退りをした。
まるで図っていたかのようなその出来事に私は呆然と眺めていることしかできなかった。