第25章 甘える勇気
昨日の夜、夕餉の前に彼に抱かれてしまったことで一食食べ損ねてしまって、気づいたら陽の光で目が覚めた。
いつものことといえばいつものこと。
宇髄さんは昨日、出発が遅かったようでまだ帰っていないが、お風呂すら入っていない私は朝っぱらから風呂場に直行した。
情交後特有の体の怠さも膣の痛みも彼に愛されていると思えばなんてことはない。
ただ…里にいる時はあれほど誰からも女として興味を持たれなかったと言うのに、里から出た途端に恋人ができて、尚且つこうやって他人から想われるなんて…感慨深い。
外の世界にはいろんな人間がいる、と言うことだろう。こんな私でも好かれるのだから人間の好みと言うのは分からないものだ。
「ほの花さん。おはようございます。」
「雛鶴さん…!おはようございます。すみません…昨日は寝てしまったようで…。」
「ふふ。分かってますよ!天元様が声高々に『ほの花抱き潰したから夕餉食べれねぇと思う』って聞きましたから。」
それを聞いて、人に何を恥ずかしいことを言ってくれるのだ…!と項垂れる。
抱き潰された側からするとそう言う目で見られることはいつになっても慣れないものなのだ。
「す、すみません。お風呂に入ったら朝餉の準備手伝います。」
「大丈夫ですよ!体つらくないですか?天元様から聞いてます。今日は決戦なんですよね?」
「け、けっせん…。」
どんな言い方したのだろうかと単純に気になったが、宇髄さんのことだから恥ずかしげもなくありのままを皆に伝えたことだろう。
「雛鶴さん達にもご迷惑をかけたみたいでごめんなさい。塀の件も…すみませんでした。」
「何を言ってるんですか!ほの花さんは被害者なのですから謝る必要ないですよ。」
にこやかに笑ってくれる雛鶴さんが綺麗で見惚れてしまう。私がもし宇髄さんの立場なら間違いなく、自分ではなくあの三人を嫁にはしたままだったことだろう。
宇髄さんも大概気狂いの部類だとは思うが、そのおかげで私は脱処女を出来たわけで感謝して止まない。たとえ、身体が毎回痛くても。
彼との愛を確かめられることがどれほど尊いことなのか分かっているから。
私は雛鶴さんに深々と頭を下げると風呂場に直行した。