第25章 甘える勇気
漸くほの花が俺の背中に手を回してくれたのでホッとした。
抱え込む癖は出会った当初からのことだが、周りから見たら気遣いの人間で評価は高い。
しかしながら、恋人としてはあまりにお粗末だ。
末っ子の癖に甘え下手とかあるんだなと最初は不思議だったが、狭い世界で生きて来たことで里以外の人間との距離感がまだうまく掴めていないのだろう。
初めて出来た恋人である俺に対しても、恋人というのがどんな存在かもちゃんと理解できちゃいねぇ。
迷惑くらいかけたからってどうってこっちゃない。
他の女にかけられたら面倒だし、関わりたくないと思うが、他でもないほの花からのモノならば一緒に悩むのが楽しみなくらいだとも思っていた。
やっと…それが叶うのだから。
「ほの花、それで?俺はどうすればいいわけ?」
「うー…、あの、…明日、来るんだって…、天元に、物申すって…変なこと言ってて…。」
「はぁ?こっちの台詞だわ。物申してェのは。上等じゃねぇか。派手に相手してやらァ。」
何を物申すと言うのだ、こちとら自分の恋人を傷つけられてクソほど苛立っていると言うのに。
だが、こちらからわざわざ出向いて苦言を呈するよりも、来てくれるならば都合がいい。
そんな男のためにかける時間は数秒たりとも惜しいと感じるのだから。
「…面倒なことになってごめんね。」
「ほの花のことを面倒だと思ったことは一度もねぇよ。見縊んな。俺のこと。」
「私は面倒だよぉ…。もう会話ができなくて困って…。」
俺よりもよっぽど面倒くさいと思っているようで体を少しだけ離して見たほの花は唇を尖らせて不満を露わにしている。
しかし、聞きたいことはまだある。
まさかとは思うが…本人の口から聞かないと安心できないこともあるのだ。
「…他には何もされてねぇよな?触れられたりとかしてねぇな?」
「それは…大丈夫。何もされてないよ。」
「そうか…。」
あの糞鬼の時のようにほの花に何かしやがっていたら本気で人殺しをして、鬼殺隊を除隊になっていたかもしれない。
この期間に抱いていても変な癖は付いていなかったのだから大丈夫だとは思っていたが、本人に聞いたことで漸く胸を撫で下ろした。