第25章 甘える勇気
塀に穴…、塀に穴……?!
まさか屋敷にそんなことしてるなんて思わなかった。自分だけで解決しようとしていたのに、既に宇髄さんに多大な迷惑をかけていたなんて頭を抱えるしかできない。
こんなことならばもっと早い段階で苦言を呈しておけば良かった。
その内、飽きるだろうと安易に考えていた二週間前の私を殴ってやりたい。
抱き締めて背中を撫でてくれる宇髄さんの手が温かくて絆されそうになるけど、頭の中をぐるぐると迷惑をかけてしまった事実が埋め尽くしていく。
そんな私に宇髄さんの声が降って来た。
「…ほの花、悪かった。このままでいいから聞いとけ。本当は時透が俺に教えてくれてずっと知ってたんだ。」
「…無一郎くんが…?」
「…おお。俺は知ってた方がいいって教えてくれた。いい弟だな?」
そうなんだ。
無一郎くん、伝えてくれていたんだ。確かにこうなってしまえば、事前に知っていたということで話が遥かに簡単に伝わるだろう。
「知っててお前に言わなかった。ほの花が自分から俺を頼ってくるまで言わないでおこうと思ったから。」
「…え?」
「俺はお前の婚約者だぞ?迷惑だって心配だっていくらでもかけられてもいいと思ってるのによ?お前は当たり障りのないことしか言わねぇし、一人で何とかしようとする悪い癖があるだろ?だから待ってた。助けてって言ってくるのを。」
それを聞いて、急に彼の心音が聴こえて来た気がした。トクントクン…という心地いい響きで私を包んでくれる。
ずっと助けてくれようとしてたのに、私が勝手に空回りしてたのかな。
「それなのに、あの手紙見て、腹が立ってほの花に当たっちまった。ごめんな。せっかく助けてって言ってくれたのに気に病ませたろ。あんなこと言っちまった後だけど、俺を含めて此処に住んでる奴はみんなお前の家族なんだからよ。頼ればいいんだ。」
「で、でも…、っ。」
「反論は聞かねぇ。いいからお前は俺に甘えてりゃいいわけよ。分かったか?」
「うぅー…ごめ、なさ…ひっく」
「謝んな。次謝ったら今からぶち込むぞ。(ま、どっちにしろ後からするけど)」
優しい声と心音と温かさでいつのまにか不安は消えて、宇髄さんに縋り付くように抱きついていた。