第25章 甘える勇気
違う違う…。
予定が狂っちまった。
こんな風にほの花を責め立てる気なんてさらさら無かったのに、あまりに酷い手紙の内容に苛つきが止まらなかった。
ほの花の容姿を褒め称え、自分がどうやってオカズにしてるかを事細かに記し、将来の妄想を永遠と詩的に綴られたそれ。
こんな酷い内容の手紙をもらっていたかと思うと流石に怖かっただろう。
早く聞いてやれば良かったと自責の念にも駆られていたために止まらなかった。
屋敷の件を言って咎めるような言い方をしてしまったのは明らかに俺が悪いのに、ほの花に気を病ませることをしてしまった。
ただでさえ、"助けてください"というだけでも時間かかかる女なのに。
これでは二度と甘えにくくなってしまうだけではないか。
「…ごめん、なさい…。みんな、怖い想い、しましたよね。塀の修理代も出します…。本当にごめんなさい。」
ほら、こうなるだろ。
塀の修理代なんてどうでもいい。
怖い想いなど誰もしていない。
皆、ほの花の身を案じていただけ。
「…ちげぇ、ごめん。そうじゃねぇんだ。」
「…え?」
「修理代なんていらねぇし。そういうんじゃねぇ。あーー、悪ぃ!腹立って八つ当たりしたわ。」
気にするなと言っても言ってしまった言葉は変えられない。素直に謝れば驚いたような顔をしてなんとも言えない表情を返される。
こういう時のほの花はきっと碌でもないことを考えてるに決まってるので、再び引き寄せて抱き締めることで先ほどの言葉を帳消しにできないかと躍起になる。
「…此処がバレてしまったのも、ごめんなさい。」
「もう良いって…。ほの花が無事ならそれでいい。ただ…、なかなか甘えられなくて腹が立っちまっただけ。お前のことを怒ってるわけじゃねぇから。」
それでも一向にこちらを見ずに、下を向いたまま唇を噛み締めてるほの花に焦燥感に駆られる。
家がバレたところで此処にいる人間は全員それなりに戦えるし、困ることなどない。
背中を撫でることでほの花の自責の念が少しでも晴れれば…と夢中で掻き抱いた。
俺だって今、失態を犯した。
お前と同罪だ。
そう伝わるように、必死だった。