第25章 甘える勇気
宇髄さんに言われた言葉を一つ一つ咀嚼して飲み込む。
確かに尾行と言うことを含めていなかったのは否めないし、自分の考えが浅はかだったと感じざるを得ない。
「…ごめんなさい。そう、だよね。」
「…で?尾行されて…?他には何された。」
「お手紙、を何枚かもらいました。」
「見せろ。」
そう言われて私は懐から返し忘れてしまったそれをそのまま宇髄さんに差し出した。
それを受け取ると、目の前で広げて読み出す彼を全く見ることができない。
見なくても分かる。
きっと眉間にこれでもかと皺を寄せているに違いない。
地獄の読書会が行われる予定ではなかったのだが、こうなってしまえば仕方ない。
ペラッと紙を捲る音が妙に耳に響いた。
「…なぁ……?」
「へ、…?!は、はい…!何でしょう!?」
「コイツ、派手にぶっ殺して良いよな?」
地を這うような低い声が聴こえたかと思うと、殺人予告をする恋人に私は慌てふためき、やっと顔を見た。
案の定、般若のような顔をして怒りに打ち震えている宇髄さんに私の方が震えた。
「あ、いや、駄目!駄目です!!」
「ぶっ殺したら駄目なら、殴り殺すのはいいな…?」
「…駄目。天元。駄目だよ…。」
完全に目が据わっている彼を宥めようと腕に縋り付くが、きっと怒りは収まらないだろう。
しかし、急に私に向き合い、肩を掴むと辛辣な視線を向けられた。
「お前な、これだけじゃねぇんだぞ?分かってねぇから教えてやるけど、屋敷の塀に穴あけて覗き穴作って中を覗いていやがったと思う。」
「…え?!塀に、穴…?!」
「…お前だけの問題じゃねぇんだよ。早く言わねぇからこういうことになるんだぞ。分かってんのか?」
寝耳に水の内容に全身が震えた。
自分で解決できなかったと独りよがりに落ち込んでいたのに、既にみんなに迷惑をかけていたなんて思いもしなかった。
あまりに情けなくて、再び涙が込み上げてきた。
屋敷に被害があったことなんてもちろん知らなかったけど、きっと宇髄さんは私が言うのを待ってくれてたんだ。
だから今日まで言わなかった。
被害を受けてるのに、私に合わせてくれたんだ。
本当はずっと前から知っていたんでしょ?
何て情けないのだ。
恥ずかし過ぎてもう目も合わせられない。