第25章 甘える勇気
──助けて、ください
敬語なのも気に入らないし、それを言うためにどれだけ時間を使ってるんだと言いたいことはたくさんあるが、自ら助けを求めて来たほの花を見て心から嬉しかった。
やっと俺に甘えてくれた。
「あのな、ほの花。」
「ひっ、く…、う、ん」
「好きな女が困ってたら助けるに決まってんだろ?断る筈がねぇことを何故そこまで言いにくそうなんだ、お前は。」
隣で震えながら泣いているほの花の体を引き寄せると優しく抱きしめて背中を撫でてやる。
ほの花からしてみればこんなことを言うだけでも相当自制心を捨てたことだろう。
簡単に出来る奴もいるだろうが、俺の女はこんなことでも泣いてしまうくらい責任感の強い女なのだ。
「だ、って…、自分で、解決できな、くて…、情けなくて…。」
「そもそも何がどうしてそうなったわけ。最初から説明しろ。助けてやるに決まってっけどよ。経緯が全くわからん。」
此処までくれば自分の口で全て吐かせよう。
そうした方が気分もスッキリする筈だ。
「…最初、は…尾行、されてて…。」
「はぁ?尾行だと?いつから。」
「え?えっと、…二週間、くらい前?」
「その時点で言え、馬鹿が。」
「…で、でも、別に何もされてないの!ただ後をつけられてたってだけで…!勿論、産屋敷様の調合の時は撒いてたし!」
本当にコイツは危機管理能力がないのか?
隙だらけのくせに、万が一弱かったらあっという間に手篭めにされるぞ。
深い深い深いため息を吐くと、ほの花を見つめる。
「あのな、何もされてないだと?されてんだろ。尾行を。」
「…え。」
「…本当に馬鹿だな、お前は。尾行は何かされた内に入んねぇとか思ってんなら考えを改めろ。それなら例えば、須磨が誰かに付き纏われてたらお前は何とも思わねぇ?」
「そ、それは…!だめ!私が返り討ちにしてくる!!」
「なら同じことだろ。俺が何とも思わないと思うか?ほの花が男に付き纏われて。」
体をピクリと震わせるとチラッとこちらを見て、固まったほの花に再びため息を吐く。
お前が男に付き纏われてるって知ったら俺は派手にその男をぶち殺したいほどの怒りを感じるに決まってるだろうが。