第25章 甘える勇気
「で?どうした。」
部屋に入ると宇髄さんが座ったのを確認すると前ではなく、敢えて横に座った。
食事をする時も隣に座るし、寝る時も隣だから何をするにも彼が隣にいると落ち着くのだ。
話をするにしたら本来なら前に座るべきだろうが、どうしても顔を見て話す勇気がなかった。
「え、と…、うん。あの…。」
何から話せばいいのだろうか。
こんな風に助けを乞わないと行けない自分が情けなくて言葉がうまく出てこない。
それでも私の言葉を待ってくれているようで口を挟まない彼に気持ちだけが焦ってしまう。
言わないと。
早く言わないと。
「…あの、…っ…。」
言葉を探している私を落ち着かせようとしてくれているのか優しく背中を撫でてくれた宇髄さんに勝手に込み上げてくるものがあって必死に耐えた。
泣くべきじゃない。
助けを乞うだけでなく、泣いて困らせるなんてことはするべきじゃない。
呼吸を落ち着かせようと深呼吸を一度すると畳の一点を見つめたまま、意を決して話し始める。
「…あの、ね。ちょっと…、ある人に…好かれてしまったようでして…。」
「ある人に好かれた?は?男か。」
「あ、いや…その、ちが、わないんです、けど…。ご、ごめんなさい。」
何を言っているのだ。
支離滅裂過ぎて話の全容が全く見えてこないと言うのに宇髄さんは珍しく怒り狂うこともなくジッと待ってくれているので、再び言葉を探した。
「…あの、えっと、…、男の人に好かれてしまったようでして…、自分で何とか対処しようと思ったんですけど…上手くいかなくて…お助け願えないかと存じましてでござる…。」
「どこぞの武士か、お前は。」
緊張しすぎて言葉遣いは変だし、込み上げる涙を堰き止めるのに必死で拳を握り締め過ぎて痛いし、宇髄さんの顔も見れないし。
結局、一人で何にもできなくて情けないことこの上なくて、本当に穴の中に入りたい。
微動だにしない私に見兼ねて宇髄さんは答えを引き出すように話し出す。
「…あのな、具体的に言え。俺にどうしてほしいんだよ。」
「…え、と…、あの、……た…」
「…た?」
「うー…ふぇ、たすけて、ください…」
言葉にしたらたった八文字。
その八文字を伝えるのに私は何分かかったのだ。
しかし、泣き始めてしまった私が見上げた先にいた宇髄さんは優しく微笑んでくれていた。