第25章 甘える勇気
「…はぁ…。」
一体何度目のため息なのだろうか。
気が重いのなんの。
宇髄さん、怒るかな…。
世話かけるなって言われるかな。
でも、言わないと明日の正午宇髄さんに怒鳴り込みに来てしまう。
知らずにそんなことになった方がとてもじゃないけど顔向けできない。
屋敷に帰らないといけないのに、帰るのが怖くて帰れない。
そう言って何度屋敷を通り過ぎたことか。
まきをさん達に「ビシッと言ってくる!」と言ってきた手前、何もできなかったことも恥ずかしいし、結局宇髄さんの手を煩わせることも恥ずかしい。
近所をぐるぐる回って時間を潰している内に時刻はもうすぐ午後六時というところ。
此処まできたらもう帰るしかない。
漸く腹を決めて屋敷に向かう。
憂鬱だ。本当に憂鬱。
徘徊してたと言われてもおかしくない奇行を終えて、玄関にたどり着くと扉を開けて小さな声で「ただいま〜…」と言う。
後ろめたさが半端ないため、できれば誰も出迎えてくれなくて良い。
しかし、玄関を開けてすぐに「遅かったな」と声をかけてきたのは宇髄さんでビクッと肩を震わせた。
「あ、…て、天元。ただいま…。ご、ごめんなさい。お散歩してたら遅くなっちゃって…。」
「おいおい、日が暮れてきたらあんまり一人で散歩とかすんな。危ねぇだろ。」
「ごめんね…!次からはもう少し早い時間にする!」
どうしよう。いつ言えば良いんだろ。
いや、もういつ言っても同じことだろう。
嫌なことは早めに終わらせた方がいい?
夕餉の後のがいい?
頭の中がぐちゃぐちゃで履物を脱ぎながらぐるぐると考えが巡る。
脱いだ履物を揃えて端に寄せて立ち上がると後ろにはまだ宇髄さんがいて、頭を撫でられた。
「…最近、変わったことねぇか?」
「え…?」
突然そんなことを聞かれて狼狽えてしまったが、渡りに船かもしれない。
宇髄さんからそんなことを切り出してくれたのならば幸運だと思おう。
「えと、変わったことというか…。ちょっと…困ったことがあって…。」
「困ったこと?どうした。俺の部屋で聞くわ。」
まるで予測していたのか流れるように部屋に促されるので驚いたが、彼の誘いに頷くと部屋に向かって歩き出した。