第25章 甘える勇気
しかし、いつだったか外の塀が一部破損してるから見てくれと元嫁達に言われて三人に連れられて外に出たことがある。
確かに塀が一部破損していてそこから屋敷内が覗けるような覗き穴のように見えた。
その瞬間、あの男の顔が頭に浮かび、ため息を吐いた。
「…いつからだ?」
「分からないんですよ。此処だけじゃなくて角を曲がったところの塀も穴が空いてて。」
「ちょうどほの花さんのお部屋の前のところも空いてるんです。だから天元様がこの前言ってた…あれじゃないかと思って…。」
「そう言えば!ほの花さんに昨日からお手紙が何通も届くんですーー!絶対その人ですよーー!ほの花さんは何でもないって言うんですけど…。」
覗きをするとは随分卑怯な真似をしてくれるじゃねぇかよ。俺のいない時に此処からほの花を覗き見してたってか。
器物破損で先ずは逮捕されろ。
「…とりあえず、現行犯じゃねぇと逮捕はできねぇから。これはなんか向こうから目隠しに板でも打ち付けるように正宗たちに頼め。」
「わかりました。ほの花さんがいくら好きだからってこんな卑劣なことするなんて最低ですよ!」
「まきを、とりあえずほの花には言うな。アイツが自分から言ってくるのを待つからよ。」
「……それで良いんですか?」
「アイツが自分から言えねぇと意味ねぇんだわ。何でも一人で抱え込む癖があるからよ。」
良いわけがない。
今だって腑が煮え繰り返りそうになるのを必死に我慢している。
俺のほの花にこんなことして許せるほど心は広くない。
いや、それならば広くなくとも良い。
自分の女に卑劣なことをした糞野郎はどんな奴であろうと地獄に送ってやる。
だが、一人で何とかできるって思っているほの花が困った時に自分から言えるようにしねぇとこの先、不安だ。
何かあってからでは遅い。
すぐに相談してほしいし、相談できる相手だと言うことを知ってほしい。
いつもいつも体裁ばかり気にして、迷惑かけないように生きてるアイツには荷が重いかもしれねぇけど、甘える勇気、迷惑をかける勇気を持つことが必要だ。
そんなことでお前から離れて行くわけねぇんだから。