第25章 甘える勇気
時透にほの花が変質者に合っていると聞いてからと言うもの俺は注意深く見るようにしていた。
…とは言っても日中、いつも屋敷にいるわけではないし、遠方に任務に行く時は昼間から出かけてしまうことも多い。
だが、俺には強い味方が六人もいる。
アイツらに俺が居ない時間帯に探りを入れてもらうことにしたのだ。
時透の話で一般人だと言うことは分かっているし、命の危険がないことも理解している。
それでもほの花に隙あれば手を出そうとしているのは見え見えだ。
大体、隙あればというか、アイツは隙だらけの女なのだ。
何故あんなに隙だらけなのか。
常に声をかけにくい雰囲気を保ってくれていれば何の不安もないのだが、どうにもこうにもそんな雰囲気は皆無。
そうだとしても、一度くらいはどんな野郎なのか面を拝んでやろうと思い、時間がたまたまあった日に俺は、ほの花を玄関で待ち構えて出迎えたことがある。
「おかえり〜ほの花。」
「あれ?天元!どうして?お仕事は?」
「今日は出て行くのが遅いからよ。お前を待ってた。出かける時間はねぇけど、少しくらい顔見てェしな。」
そう言って腰を引き寄せてやれば、嬉しそうに笑うほの花に口づけをかましてやった。
突然、玄関先で口づけをされて、狼狽えているが拒否もしない。
その隙に、彼女が歩いてきた方向を見ると俺のことをジト目で睨みつける男が視界に入ってきた。
(…アイツか。おーおー、嫉妬丸出しで。)
嫉妬されたところで俺の女なのだからその感情は間違っているし、無意味な話だ。
見せつけるように何度も口づけをしてやると、流石にほの花が「て、天元…!」と真っ赤な顔をして抗議をしてくるので、離してやった。
「…も、もー!!何ー!急に!ビックリしたよ〜!」
「ほの花を補充したのー。」
「それなら屋敷の中でしてよー!!こんなところ誰かに見られるよー!」
「はいはい。じゃ、中でもう一回。」
その時は、肩を抱いて屋敷内に入ったが、奴が怒鳴り込んでくることもなく、それどころか俺との接触は全くと言ってしてこなかったので肩透かしを喰らった。
様子を見ているだけかもしれないが、腰抜け野郎には違いないと少しだけ余裕をぶっこいていた。