第4章 実力試験は実戦で
気まずい空気を打破したのは胡蝶で、呆れたような声色で話し出した。
「他所様のことですので、お好きになさったら良いと思いますが、奥様がいらっしゃる身でありながらお館様からお預かりしたお嬢さんを手篭めにするのはどうかと思いますよ。」
「だからちげぇって…。手は出してねぇよ。」
「でも、好いていらっしゃいますよね?」
最早確信してるだろ?と思うような口ぶりに二の句が告げずにいると深いため息を吐かれてこちらも苛ついてしまった。何を苛ついているのだ。図星をつかれたからだろうが。
「まぁ…ほの花さん、はとてもお綺麗ですもんね。それでいて嫌みがない性格でいらっしゃるので虜になる男性はきっと多いとは思いますが…あなたがなってどうするんですか。」
「はぁ…、わぁーってるよ。アイツはしらねぇからここだけの話にしてくれ。」
「言えるわけがありません。真面目なほの花さんのことです。今の状況だとあなたを責めるどころかご自分を責めて苦しむだけですから。」
言いにくいことをズバズバと言ってくる胡蝶だが、その顔は笑顔の中に少しの怒りも散見した。まぁ、嫁という立場の三人をそのままにして一緒に住まわせている以上、俺はどう思われようと甘んじて受け入れるとして、胡蝶の言う通りほの花は違う。
俺がほの花を女として見てることを知られたら責任を感じて、姿を消すことさえあり得る。そうなれば俺は間違いなく目の前にいる胡蝶にも全集中の呼吸で襲撃に遭うだろうし、家に帰れば嫁三人に袋叩きに遭うに違いない。
ハッキリしないといけないと思っているが、里から抜ける時に共についてきてくれたアイツらを自分から切ることはできない。
折り合いをつけるには時期尚早だし、この想いも時間が経てば薄れてくると踏んでいたから一ヶ月経っても薄れるどころかどんどん膨らむ一方で自分が一番どうしたもんかと思っている。