第25章 甘える勇気
「実は…宇髄さんには言わないで欲しいんですけど…、知らない男性に好かれてしまったようでして…。」
「やっぱり恋文だったんですね?そうじゃないかと思ったんですよ。天元様にビシッと言って貰えばいいのに。」
「そうですよ、ほの花さん。こんなに大量に送りつけてくる人、異常だとしか思えません。天元様に相談なさった方がいいです。」
「きっと心配しますよぉ〜?そんなこと黙ってたら。」
確かに此処まで来ると一声かけた方がいいかも知れない。
しかし、まだ彼に言ってもらう前に自分で彼と向き合って解決する方法を試したわけではない。
自分で出来るところまでやってみて、無理なら彼に頼るのは良いと思うが、流石に毎日"柱"としての業務が忙しい中で手を煩わせる内容がこんなことでは申し訳ない。
「そう、ですよね…。皆さんにまでご迷惑かけてごめんなさい。ちょっとやめてもらうように話してみて…それでだめなら宇髄さんに相談することにします!」
「えー?大丈夫ですか?すぐに相談してからのが良いんじゃないですか?」
そう心配そうに言うまきをさんだが、その男の人より強い自信があった私は何とか出来ると思っていた。
自負するだけの強さは身につけているとは思うが、それが役に立つかどうかは別問題だということを失念していたことは私の最大の誤算だ。
三人に深々と頭を下げると手紙を全て引っ掴み、町に向かって歩き出す。
いつも視線を感じるところまで向かうと、立ち止まりその人の気配を感じるまでジッと待った。
すると五分ほどでいつもの気配を感じたので、私は真っ直ぐにそちらに向かって歩いて行き、角に佇みこちらを見ていた青年に声をかけた。
「…あの、少し良いですか?義晴さんでお間違い無いですか?」
「ああ、そうだよ。君の方から声をかけてくれるなんて…、感激で今晩は眠れないかも知れないよ。やはり君と僕は運命なんだね。」
道の真ん中で随分と頭のおかしいことを言っている彼はそれだけで眩暈がするほど狼狽えた。
しかし、こんなことで狼狽えていたら話が進まない。少しだけ人目につかないところに移動すると本題を伝えるべく口を開いた。