第25章 甘える勇気
──愛するほの花さんへ
ああ、君はなんて美しいのだろうか。
初めて君を見てから完全に僕は君の虜になってしまった。
今日も朝、君の顔を見られて嬉しかったよ。
また明日も町で会おう。
君の愛する義晴より──
いやいやいや、あなたのこと愛した記憶は一度もありませんけども?!
私が愛してるのは宇髄さんだけ。
それなのに一方的に愛をつらつらと書き綴られているその手紙は完全に"恋文"。
家も知られているからこの手紙は直接の此処に届けたのかもしれない。
そんなことをされては此処に住んでいるすべての人に迷惑がかかるかもしれないし、一刻も早くやめてほしい。
どうせ貰うならば初めての恋文は宇髄さんから欲しかった。
こんな全く知りもしない人からの恋文など欲しくも何ともない。
箪笥に仕舞い込んだそれを破って捨ててしまおうかとも思ったが、手紙を読んですぐに破り捨ててしまうなんて少し良心が痛むのであれは暫くしてからバレないように捨ててしまおう。
そう思っていたのに次の日からも毎日のように一日に二、三通の勢いでその恋文が届くので流石に元奥様達に三日後に屋敷内で掴まると台所に連行されてしまった。
「ほの花さん?単刀直入に言いますけど、最近誰かと文通でもしてるんですか?」
台所に来るや否や、まきをさんが心配そうな顔でそう聞いてくるので慌てて首を振った。
文通というのは蜜璃ちゃんと伊黒さんのようにお互いに手紙を送り合うことで、私は一切送っていないので、断じて文通ではない。
「ち、違います…!宇髄さんがいるのにそんなことしませんよ!」
「…ですよね。ほの花さんに限ってそんなこと…とは思いましたけど、天元様に愛想尽かしたのかなぁと過ぎってしまって。」
「まさか!あり得ません!私は宇髄さんのことだけが大好きです。」
「では…、あの手紙は一体誰からなんです?毎日毎日何通も送ってくるような人見たことありません。」
まきをさんの言葉は最もで、確かに文通だとしてもそんな頻繁に送りつけるならばもう会って話せばいいだろう。
この手紙の頻度は異常だと誰しもが感じること。
それは私だけでなく、此処にいる三人も同じのようだ。