第25章 甘える勇気
よく分からない人から尾行をされているのは知っていたが、産屋敷様の調合に行く時は流石に場所を知られてはならないため、私はここ数回遠回りをして尚且つ、撒いてから向かっている。
勿論、一般人が私に追いつけるわけがないので、そう心配はしていないが、町に戻って来ればまた後ろに気配を感じる。
何が目的なのだろうか。
無一郎くんは宇髄さんに伝えた方がいいと言っていたけど、言った方がいいのかな。
巻き込む前に伝えた方がいい気もしてきた。
まぁ、宇髄さんに何かしようとしたとて私よりも完膚なきまでに返り討ちに会うのが関の山だが。
しかし、今日も今日とて彼は何もしてこない。
ただ後ろから視線を感じるだけ。
いっそのこと襲ってきてくれたら正当防衛で返り討ちにできると言うのに。
何もされないまま屋敷に帰ってくると玄関先に須磨さんがいた。
玄関の掃除をしてくれていたようで箒と塵取りを持って「ほの花さん〜!」と声をかけてくれた。
「あ、須磨さん!お掃除ありがとうございます!荷物を置いたら手伝いますよ」
「ええ?!大丈夫ですよー!もうすぐ終わりますし!あ!そういえばほの花さんにお手紙が届いていましたよ。お部屋に置いてあります!」
「お手紙…?」
掃除を手伝うという申し出を早々に断られると彼女が思い出したかのように手紙が来ていたことを教えてくれた。
しかし、此処に来てからというもの、私に手紙が来たことなど初めてのこと。
里は全滅している以上、私に手紙など送る人間など存在しないと思っていたのでかなり驚いた。
部屋に置いてくれたというので、履き物を脱ぐとそれを確認するために部屋に向かった。
自室の襖を開けて、目に飛び込んで来た座卓の上に置かれた白い封筒はまさしく手紙のようだった。
宛名までしっかり書いてあるが、見たことのない字に首を傾げる。
しかしながら手紙など初めてもらったので少しだけ嬉しかった私は少しだけワクワクしながら開けたのに、その気持ちはすぐに打ち砕かれた。
できればこの手紙はすぐに捨ててしまいたい。
あの人に見つかる前に。
そう思い、箪笥の一番上の引き出しにそれをつっこむと深いため息を吐いた。