第25章 甘える勇気
「今日はありがとうございました!お邪魔しました。」
「霞柱様、お泊まりになっていけば良いのに…。」
「ありがとうございます。でも、今日は帰ります。宇髄さん、ほの花さん、皆さんお邪魔しました。」
無一郎くんは今日よく笑ってくれていたと思う。
あれほど無表情だと思っていたのにこうやって見ると可愛いし、弟だと言って絡んでいく私を鬱陶しそうにすることもなく、接してくれるのが嬉しい。
雛鶴さんが「お泊まりになればいいのに…」と言ってくれて私も勧めたが、明日任務で出発が早いそうで準備もあるから…と帰っていった。
「なんか寂しいね、帰っちゃうと…。」
「また呼んでやればいいだろ?もう"あーん"はすんなよ?!俺にやれ!俺に!」
そう言って怒ってくる宇髄さんだけど、こちらもあんな恥ずかしいことをさせられてもうやろうとは思わない。
無一郎くんは弟でまだ十四歳だからやっただけであって、この人までやってくれなんて言われるなんて思わなかった。
恥ずかしげもなく"あーん"と口を開ける宇髄さんは可愛いと言えば可愛いけど、やはり大人げないとも感じる。
だけど、そんないつも全力で愛してくれる宇髄さんがやっぱり好きだから結局は絆されてしまうんだ。
「もう誰にもしないーー!!私、片付け手伝ってくるから!!」
「あ、おい、待て!逃げんな!!」
無一郎くんを呼ぶと言ったのは私だし、準備も片付けもちゃんとやりたいので仕事の合間に手伝わせてもらったけど、"あーん"は兎も角として、好きな人に手料理を食べてもらえる喜びはやはり一入。
無理してまた倒れたら余計に心配かけるのでもうしないが、こうやって無一郎くんを呼べばまた手料理を作る機会ができるわけで。
そうすれば宇髄さんがまた喜んでくれる。
今日も"あーん"がなければ本当に喜んでくれていたし、「うめぇ!」と何度も感想を言って食べてくれる姿が嬉しくて、照れ臭くて…。
道半ばなのに物凄い幸せを感じた。
しかし、そんな幸せを感じていたのが夢だったかのように翌日、頭を悩ませることが起きたのだった。