第25章 甘える勇気
「もうーーー!!宇髄さんーー!仲良く食べましょ!お尻ぺんぺんしますよ!」
「お、お尻ぺんぺん……。」
突然ほの花の雷が落ちたのは分かる。
俺が独占欲をかましたから怒ったのは理解できる。だが、23歳の男に向かってお尻ぺんぺんするって…‥。
流石の俺も空いた口が塞がらずに変な顔をして固まってしまう。
しかし、口火を切ったのはまさかの時透だった。
「宇髄さんが…お尻、ぺんぺん…?」
そう一言呟くと、下を向いて肩を震わせ出したかと思うと、口を押さえて声を耐えていたのだが、「ぶふっ」と吹いたのを皮切りに「あはははははは!!!」と笑い出した。
そんな大笑いをしている時透なんてもちろん初めて見たのでそれにもまた驚きを隠さず固まってしまった。
要するに俺は暫く固まっていたことになる。
「あはっ、あははっ、っくっ!駄目だぁっ!ほの花さん、面白、すぎる…!!宇髄さんに向かってお尻ぺんぺんって…!!そんなこと言えるのほの花さん、くらい…!!」
「え、えー……、えへへへ。」
何故か褒められたと思ったのか頭をぽりぽり掻きながら照れたような笑いをするほの花にやっと我に返った俺は早々に突っ込む。
「いや、お前な!照れてんじゃねぇよ!褒められてねぇし、もっとマシな言い方しろ!尻を蹴り上げてやるとかよ。」
「…そんなこと急に思い浮かばないよー。それにもう言っちゃったものは消せないよ。ほら、仲良く食べよ?」
勝手に話を完結させたほの花が俺の目の前にあった魚の煮付けを一切れ小皿に取り分けると箸でほぐして時透の口に持っていく。
「はい、無一郎くん!あーん!」
「あーん。」
「ちょーーーっと待てぇい!!!」
いや、俺は間違っていない筈だ。
皿を渡せばいいものを何故「あーん」なのだ。俺ですらやってもらってことないと言うのに!!
しかし、俺の抗議も虚しく、箸に摘まれていた魚は時透の口の中で、もぐもぐと咀嚼している最中だ。
「俺も!それやれ!!俺にすらやったことねぇだろ?!」
「別にいいじゃん!弟ができたらやってみたかったんだもん!」
「何だ、それ!俺はお前の恋人だぞ!?」
そんな俺たちが三人で騒がしくしているのにも関わらず、雛鶴達は涼しい顔をして食事をすすめていたことには驚きしかない。