第25章 甘える勇気
「かんぱーい!無一郎くん!いらっしゃーい!」
「いま、いらっしゃいって言ってどうすんだ。もう来てから1時間も経ってるんだぜ。そこは"ようこそ、宇髄家へ"だろ。」
「え、あ、じゃ、ようこそ〜!」
ほの花を間にして俺と時透が座っているが、トンチンカンなことを炸裂させるので呆れて全員が釘付けだ。
正宗達に至っては頭を抱えている。
「あはは!ほの花さん、ありがと!皆さん、今日はお招きいただきありがとうございます!」
時透が礼儀正しいと言う印象はなかったが、今日見てみれば普通に一通りの作法はあるように感じる。
雛鶴達にも好印象で料理をこれでもかと時透に勧め出したのでいつぞやのほの花のときと同じ状況になった。
あの時はほの花が体調不良だったので、慌てて止めたが時透はそう言うわけでもないし、思う存分堪能して貰えばいい。
「宇髄さんはお酒飲む?」
隣にいたほの花がそう聞いてくるので「今日はいいわ」と断る。
酒の席は好きだが、もてなす相手が今日は未成年じゃ飲む気にはならない。
「じゃあ、ごはんたくさん食べてね。」
「ああ。ほの花はどれ作ったんだよ。」
一時間の間にほの花は今に姿を見せなかったということは料理を作っていたと言うこと。
彼女の手料理を食べる機会はなかなかないのでこういう時は結構楽しみだったりする。
「え?私?えっと、その魚の煮付けと天麩羅揚げたの。」
「よし、じゃあ全員それは食うな。」
「何言ってんの!!気にせずみんな食べてね!」
「何でだよ!!お前が作ったもんは俺のだろ?!」
どんな暴君だと言われようともやはり勿体無い。
俺の女が作った料理を他の野郎に食わせるなんてたとえ家族であっても何ともモヤつく。
「えー、狡いですよ。宇髄さん。僕も食べたいです。」
「はぁ?!お前は握り飯食ったんだろ?!ほの花の!」
「今日は食べてないです。」
「知ってるっつーの!!」
この家で俺に逆らう奴なんていないのに、時透はこういう時に限って子どもらしさを出してきやがる。
これじゃ、まるで俺が大人げないみたいでは……ないか。
そんな俺を見て雷を落としたのは他でもないほの花だったのは言うまでもない。