第25章 甘える勇気
「ほの花のことでよ、お前に話しておかないといけないことがある。」
「え?」
折角二人きりなのだから言ってなかったことを言っておこうと茶を一口啜ると時透に向き合った。
「アイツさ、陰陽師の生き残りなんだわ。」
「…陰陽師?」
まぁ、まだ子どもだ。俺ですら陰陽師に関して多少の知識しかないのに、言葉すら知らないこともあり得る。
それくらい陰陽師とは希少な存在。
そして古の一族ということに間違いはない。
しかし、話し始めたからには自分の持てる限りの知識を目の前で真剣に聞いてくれてる時透に伝えた。
陰陽師の里のこと。
陰陽道のこと。
ほの花の稀血のこと。
治癒能力以外のことを全て。
包み隠さず時透に伝えれば、なんとなく察してくれたようで大きく頷いた。
「戦ってる時、何の呼吸なのか分からなかったんです。派生した独自のものなのかくらいにしか思っていなかったんですけど、そう言うことだったんですね。」
「そりゃわからねぇよな。俺も最初アレみたらわかんねぇと思う。このことは柱数名は知り得ているが、他言しないでくれ。ほの花を…少しでも危険から守りてぇ。」
「…分かってます。だから宇髄さんは誰にも言ってこなかったんですよね。他言しません。お約束します。姉のことですから。」
時透はそう言ってあの時のように笑った。
ほの花のことを本当に慕ってくれているようで嫉妬でなくて素直に嬉しい。
きっとコイツはほの花のためにならないことは言わないだろう。
正宗達と同じように。
「やっぱ、今度は茶菓子もってこいよ。」
「え?」
「お前の姉ちゃん意味わかんねぇくらい甘味好きだからよ。」
「あはは!確かにこの前はおにぎりをくれましたけど、いつも羊羹持ってるって言ってました。次は姉に貢物を持ってきます。」
そうだった。
最終選別の時すらおやつを死ぬほど持っていっていたほの花。
羊羹と薬膳茶でしっぽりとおやつ時間を堪能するような緩い奴だが、やることをきっちりやるので信頼は厚い。
故にこうやって慕う者が多いのだと思う。