第25章 甘える勇気
「ったく、アイツ…人の気もしらねぇでよ…。時透、まぁ上がれ。ほの花の言う通り、たまにはお前とゆっくり話してみたかったからよ。」
「ありがとうございます」と言うと履物を脱いで、ほの花の時ほどじゃないにせよ、少しだけ柔和な表情を向けてくれる。
無表情な奴だと思っていたが、ほの花といる時のコイツは年相応の少年でそれを見ると少しだけ嬉しくも思っていた。
履物を脱いだ時透を居間に案内しようとすると、「宇髄さん」と声をかけられる。
振り向くと少しだけ真剣な顔をした時透がそこにいた。
「どうした?」
「あの…ほの花さんに了承もなく言うのはどうかと思ったんですけど…。」
そこだけ聞いても内容が愛おしい女のことだと分かり、眉間に皺を寄せる。
「ほの花さん。誰かに付き纏われるかもしれないです。」
「…は?」
あまりに突然すぎる内容に目を見開いて時透を見つめる。しかし、嘘を言って揶揄うような奴じゃないのは分かりきっていること。
その内容が事実なのだと分かると更に眉間に皺が寄った。
「…今日、ずっとほの花さんを見ている男がいたんです。でも、ほの花さん、それを知ってて…一週間前からだって言うんですよ。害がないから大丈夫って言うけど…ちょっと心配で。」
そんなことは聞いたことない。
一週間前から?
一度だってそんな話を俺にしたことはない。
様子が変だと思ったこともないから恐らく本当に大丈夫だと思っているから言ってこないのだろう。
流石に困ったら助けを求めてくるし、そういう風に仕向けてきたのだから。
しかし、今回は寝耳に水。
「……聞いてねぇな。ンなことは。」
「すみません…!宇髄さんは知っていた方がいいと僕の勝手な判断で…。」
「謝ることはねぇよ。アイツが言わねぇんなら言ってくるのを待ってみるけど、知らなかったから助かったぜ。ありがとな。」
後輩の前だから待ってみるなんて余裕ぶって格好を付けたが、本当はそんな余裕はない。
どこのどいつがほの花を付け回しているのか、今すぐに取っ捕まえて吐かせてやりたいのを必死に抑える。
隠してるわけじゃない。
言う必要ないとアイツに思われたことに腹が立ったからだ。