第25章 甘える勇気
今日は時透が家に飯を食いにくる日なので朝から元嫁達が楽しそうに準備していた。
しかし、その中にお目当ての愛おしい女がいなかったので三人に聞いてみる。
「ほの花は?」
「いま、お魚を買いに行ってくれていますぅー!」
「何だよ、誘ってくれたらいいのによぉ。…アイツ。」
買い出しがあるなら言ってくれたら付き合うと言うのに。昨日も買い出しに行ってたのは知っていたので、今日も行くとは思わなかった。
近くに陣取っていれば良かった。
鍛錬をしてから、薬の調合をすると言うほの花が部屋に篭ったを最後に気づいたら既に居なくなっていた。
「天元様ったらぁ、すぐに帰ってきますよぉ〜!心配しなくてもほの花さん、強いので大丈夫ですって。」
そう言って揶揄するように笑う須磨を横目に見てその場を後にする。
そう言う心配はしていない。
確かにほの花は強いし、この時間帯に鬼の心配はない。一般人ならば間違いなく、返り討ちにすることができることだろう。
ただ何処か行くならたまには誘ってくれてもいいのに、と思っただけ。
勝手に「忙しいだろうし…」とか「迷惑かなぁ…」とか決めつけて、なかなか言ってこないからそれが不満なだけ。
それなりに甘えるようになってきた。
情交中や二人きりの時は特に。
でも、こう言うふとした時に感じる寂しさは消えない。
仕方ないので部屋に帰ろうかと思い、廊下を歩いていると…
──ガラッ
玄関が開く音が聞こえたので慌ててそちらに向かうとほの花と時透が二人揃ってそこにいた。
「お?何だ。時透。早ェじゃん。いらっしゃい。」
「お邪魔します!宇髄さん。ほの花さんとバッタリ町で会ったので一緒に帰ってきました!」
「そうか。ほの花もお帰り。お前、出かけんなら誘えよな。」
履物を脱ぎながら見上げるほの花がキョトンとした顔を向けてくるので、そこに悪気があったとは言えないのだが…、不満は溜まる。
「え?あ、ごめんね。でも、よかったね!宇髄さん。無一郎くんと話したいって言ってたもんね。早く来てくれたからたくさん話せるね!」
そう言うと時透に「ゆっくりしてね」と言い残し、魚を持って台所へ駆けて行った。