第25章 甘える勇気
無一郎くんは買ったお魚の包みを持ってくれて、私の隣を後ろを気にしながら歩いてくれている。
ひょっとしてさっきの"大丈夫?"はこのことだろうか。
やっと考えがそこまで至ると後ろをチラッと見て彼にそのことを伝えることにした。
「無一郎くん。大丈夫だよ。付いてきてるの知ってるから。」
「…え?!追い払わなくていいの?」
「んー。でも、危害を加えられるわけでもないし。声をかけてくるわけでもないんだよ。だからまぁいっかなと思って。」
「…宇髄さんは知ってるの?」
「えー?知らないよー。何もされてないのにわざわざ報告することもないよー。」
何かされたのであれば、そりゃあ相談することもあるかと思うけど、基本的には相談するまでもないだろう。
腕っ節は明らかに私のが強そうだし、彼の力を借りるまでもない。
「…言った方がいいんじゃない?」
「え?そう…かな?でも、何もされてないのに?わざわざ心配させなくてもいいんじゃない?」
「宇髄さんならそう言う小さいことも知りたいと思ってそうだけど…。」
無一郎くんの言葉も確かに一理あるかもしれないが、そもそも余計なことを知ると、彼はすぐに心配して過保護になってしまうのでなるべく一人で解決できることはしたい。
「大丈夫大丈夫!私、一人で何とかできるからさ。それに一週間経っても何にもしてこないもん。」
「一週間?!それは…やっぱり…。」
「えー?大丈夫だよ。それに宇髄さんに言ったら小さなことでも"血祭りにあげてやるわ!"とか言ってきそうじゃない?」
思い浮かべるのは宇髄さんの般若のように怒り狂う姿。
何もされてないのにこんなことを言ったらどちらかといえばあちらの人が不憫だ。
なるべく穏便に済ませたいのだ。
鬼殺隊のためにも。
変な顔をしている無一郎くんが「とりあえず撒こう。」と言うので、二人で屋敷に向かって走り出す。
昨日、家がバレてしまっているし、無意味な気もするけどとてもそんなこと言えない。
無一郎くんが心配してくれてるのだと言うことだけが伝わったので、その場は彼に合わせることにしたのだった。