第24章 情欲は無限大※
「二日酔いだなぁー、仕方ねぇわ。二日酔いの薬ねぇの?」
「……ま、……?!え?!」
朝一番にほの花から起こされて、朝っぱら開口一番「吐きそう」は慌てるに決まってる。
コイツには初対面で吐き戻されたことがあるので、その記憶が簡単に呼び起こされる。
まぁ、そのおかげでこうやって恋人になれたと言っても過言ではないのだから、良い思い出とはいえるが、間に合うのであれば間に合わせてやりたいのは当然のこと。
俺は慌てて彼女の体に夜着を着せて、厠に急いだのだった。
幸いなことに最悪の事態は免れたのだが、厠から出てきたほの花が青い顔をして今度は「頭が痛い…」と泣きそうになっているのだから冒頭の台詞をぶつけてみたのだが…。
どうやら酒を飲んだところから全く記憶が無いのがそれだけで明白になり、呆れたように見下ろした。
「…覚えてねぇの?胡蝶んとこで酒飲んで、俺に口づけしまくったのも?」
「ま、え、…?!ちょ、は?!いや、いやいや…て、天元ったらぁ〜!またまた〜!」
「……胡蝶に聞いてみるか?そこに置いてある服はお前が酒を頭から被ったせいで、アイツが貸してくれたんだぜ。」
その瞬間、ほの花の顔が見る見る青くなり、顔面蒼白になった。
事の重大さに気付いたようで頭を抱えると、頭痛のせいなのか、昨日やらかしたからなのかは分からないが、とりあえず絶望感だけは伝わってくる。
「……恥ずかしくて…もう生きていけない。わたし、土に還ります…。今までお世話になりました。先立つ不幸をお許しください…。」
「待て待て待て。人間誰しも間違いを起こすモンだ。一緒に謝りに行ってやっから土に還るのだけはやめろ。一緒に生きるって約束したろ?」
恐らく情交の時のことなんて覚えちゃいねぇだろうが、俺の制止に何とか思い止まってくれたのか唇を噛み締めて涙を溜めているほの花。
真面目で体裁を重んじるほの花からしたら今回のやらかしは寝耳に水だろう。
そんな失態を今までしたこともないのは見てるだけで分かるが、生きてく上で多少なりとも人に迷惑かけたり、心配かけることはある。
そうやって持ちつ持たれつで人間は生きているのだから。