第4章 実力試験は実戦で
「女に武器を向けられないっていうのも胡蝶の継子が自分に何かをするような加害者じゃねぇから余計に…だろ。いま、自分の家族を殺した鬼が女だとして目の前にいたらお前はどうする?」
「……そんなの、絶対首斬る…。ます。ごめんなさい。」
思わず、敬語が抜けてしまって咄嗟に謝ったが、もう今日は踏んだり蹴ったり転んだり泣いたりボロボロすぎる。
「ハハッ、別にいーって。師匠とか継子とか関係なしで敬語いらねぇよ。気にすんな。今の喋り方なかなかいいぜ。」
「駄目です。ほんとすみません。もう土下座したいです。」
「はいはい。まぁ、それは置いといて、目の前に宿敵がいたら倒そうと思うだろ?それでいいんだよ。でもな、その時に本気を出そうと思ったら鍛錬の時に出来てないことは本番で出来ねぇ。」
「うん、じゃない、…はい。」
「…だからその時、親の宿敵に本気を出せるかどうかは今にかかってんだ。分かるな?」
「うん、…はい。」
「…話の腰を折って悪ぃが、お前のその喋り方が気になって集中できねぇよ。」
「ほんとうにごめんなさい。」
結局、宇髄さんも私も集中力が切れて話がまとまらなかったように思えたが、私はちゃんと理解できていた。
父の鬼になった姿は今も目に焼き付いている。それが母だったとしても私はきっと斬っていただろう。
その時は運が良くて倒せたとしても、次倒せるかなんて分からない。
折角、共同鍛錬なんていうまたとない機会を設けてくれているのに今日の私はあまりに情けなさすぎる。
確かに女性に武器を向けるのは嫌だ。父と兄もそう言っていたので刷り込まれているというのもあるが、いまの状況を見てみれば同じ女性でも志は一緒のしのぶさんたち。
彼女たちと共に戦うためにはお互いの実力を知っていなければいけないのだ。
安心して背中を預けられる存在とはそう言うものだと宇髄さんとの鍛錬で身にしみるほど感じていたのに。
「…宇髄さん、明日からまた頑張ります。」
「…さっきの喋り方なかなか良かったんだけどな。」
「が ん ば り ま す !」
宇髄さんはああ言うけど、どこの世界に師匠に敬語使わない継子がいるのだ。