第4章 実力試験は実戦で
「なぁ、ほの花。起きてるか?」
「はぁい…起きてますけど、頭に血が上って鼻血出そうです…。」
「おおっ!悪ぃ悪ぃ!」
担がれたまましばらく歩いていたため、頭を振られて流石の私も目がチカチカしてきたところでやっと宇髄さんが声をかけてくれた。
…助かったーー。
「早く言えよ!顔真っ赤じゃねぇか。」
「いや、だって…」
何も発しないから家までこのままかと思ったのだ。それに師匠に迎えに来てもらっておきながらそんなこと言えないだろう。
慌てて抱え方を変えてくれたが、急に縦抱きにされたので思わず近くにあった宇髄さんの肩に掴まった。
そこに触れたのはあの按摩以来で急に小っ恥ずかしくなってしまって顔をそこに埋めた。
「おーい、大丈夫か?気分悪いか?ま、まさか吐くか?!」
「はーきーまーせーん!!いま、頭がくらくらしてるので平衡感覚を保とうとしています。」
「そうか?ごめんって。いいぞ、そのままで。運んでやるから。」
「…宇髄さん。私こそごめんなさい。」
「あー?何がよ。」
「…手のかかる継子で。」
あ、駄目だ。
口に出したらなんか泣きそう。
彼の肩口は広くて自分の顔は全て収まってしまう。何の香りか分からないけど、爽やかないい匂いがしたのでひたすらその匂いを吸い込んで気を紛らわせる。
「手のかかる継子ねぇ…。」
そう一言呟くと何も話さない彼にいよいよ呆れられたのかと思って顔を上げて宇髄さんを見てみるとニヤリと笑ってこちらを見ていた。
「お、やっとこっち見た。」
あまりの距離の近さに仰反るが彼の腕の力が強くて大きく離れる事は叶わない。
「大人しくしろって。ほの花。…お前はさ、どこか自分に自信なさげだけどよ。まず認めてやれよ。そういう自分を。良いじゃねぇか。できねぇことがあったって。できねぇから努力するんだろうが。」
その声色があまりに優しくてやっぱり耐えきれなくなった涙が彼の肩口を濡らしてしまった。
でも、そんな私には敢えて何も触れずにそのまま言葉を紡ぐ。