第24章 情欲は無限大※
やっと隣に戻ってきたほの花にホッとしたのも束の間。
改めて姿を見るとあまりに露出が多いし、酒のせいで目は潤んでいて顔は上気してしまっている。
それはまるで"情交中"の時のよう。
目も当てられぬ色気を振りまくほの花に胡蝶が戻ってきたら着替えさせてすぐに帰ろうと思った。
しかし、目を合わさない俺に怒っていると思ったほの花は今度は急にしくしくと泣き始めた。
「ふぇ、うじゅいしゃ、わたしのこと、きらいになったの?」
涙目で見上げてくるなんて卑怯な奴だ。
そう言う顔が一番弱いと知っている……コイツはそんな計算できないか。
「嫌いじゃねェって。とりあえず大人しくしとけ。此処にいるだけでいいからよ。」
「ほんと?きらいじゃない?すき?」
「ああ。当たり前だろ?」
縋り付くように今度は俺の膝の上に乗ってくるものだから仕方なく抱き止めてヨシヨシと頭を撫でてやる。
すると、気を良くしたほの花がにまぁと笑い、俺の首に腕を絡ませてきた。
「わーい、わたしもてんげんのことだいすきーー!!」
そう言うと突然俺に口づけをしてきたほの花と胡蝶が部屋に帰ってきたのはほぼ同時。
しかし、冷や汗を掻いているのは俺だけだ。
急に「天元」と名前で呼ばれたことは嬉しかったが、あの恥ずかしがり屋のほの花が人前で俺に甘えてくるどころか口づけをするなど考えられない。
普段ならば喜ばしい限りだが、ただでさえ他人の家で明らかに羽目を外している恋人の世話をしなければいけないのに、此処に人がいなければ間違いなく目の前の可愛い女を押し倒して情交をおっ始めるに決まっている俺。
気の済むまで口づけをさせてやり、漸く唇を離した瞬間にほの花を抱き上げると、三人に向き合う。
「わ、悪りぃ…、とりあえず今日は帰るわ。お前らほの花をオカズにすんなよ!?世話かけたな、胡蝶!服借りてくわ!」
早口で捲し立てるように話すと、俺は慌てて蝶屋敷を後にした。
未だに腕の中でにまにまして笑顔のほの花は色っぽくてたまらないのだが、師匠に尻拭いさせたわけだから今日は月を見ながら抱いてやる…と心に決めるのだった。