第24章 情欲は無限大※
「こはる、もうすぐ着くぜ。」
「本当?!わーい!」
そうやって宇髄さんは言うけど、この辺は彼の屋敷の近くだが、それは通り過ぎてしまっていた。
どこに行くとは確かに聞いていなかったが、こんな幼子なのだからてっきり屋敷に住まわせるのかと思い込んでいた私は、不安げに彼を見た。
(…一人で住まわせる気じゃ、ないよね…?流石に心配なんだけど…。)
もちろん全国を探せば、そういう子がいるかもしれないが、顔馴染みの子にそんなことさせるわけにいかない。
しかし、私の心配をよそに到着した先にあった家には見覚えがあった。
「…え…!」
見覚えがある筈だ。
だって、そこは…
「おーい、琥太郎ー!いるか?邪魔するぜ。」
そう。そこは琥太郎くん達親子のために宇髄さんが準備してあげた家だった。
そして、無遠慮に声をかけるとガラガラと引き戸を開けるので、私は一人で隣でドギマギすることしか出来なかった。
しかし、中から出てきた琥太郎くんは少し大人っぽくなって、背も少し伸びたみたいで、そんな彼の行動にも大して気にしていないのか顔色ひとつ変えてない。
「あ、宇髄さん。お!ほの花も!久しぶり。元気だったか?」
「え、あ、う、うん。琥太郎くんは背が伸びて大人っぽくなったね?」
「おお!まぁなー。」
宇髄さんの肩から降ろしてもらったこはるちゃんが玄関でキョロキョロとしているのを見て、琥太郎くんが「ああ、そいつのことね!」と納得したような顔をしていたことで、やっと納得ができた。
宇髄さんは此処に最初から連れてくるつもりで琥太郎くんたちに了承を得ていたのだろう。
そんなことを知らないのは私と目の前でぽけーっとしているこはるちゃんだけ。
ほらね、宇髄さんはやっぱりいつも私の一歩先の道を照らしてくれてる。彼の考えが理解できるとくっついていた体をもっと密着させて、彼の体温を感じた。
(…本当、格好いい人だなぁ。)
琥太郎くんがこはるちゃんの目の前まで来ると手を差し出した。
「よ!俺は琥太郎!お前の家は今日から此処だ!俺のことは兄貴だと思ってくれていいぜ!!」
そうやってニカッと笑う琥太郎くんに突然、目を見開いてそれを潤ませてしまった彼女を見てその場にいた誰もが驚いていた。
でも、私だけはその涙の意味が分かってしまい、彼女の頭を撫でてあげた。