第4章 実力試験は実戦で
「…決まっちまったもんは仕方ねぇから朝の鍛錬が終わったら胡蝶んとこ行ってこい。帰りは迎えに行ってやるから待ってろよ。」
「え、ひ、一人で帰れ…」
「待ってろ。分かったな?」
「…は、はい。」
「言っておくがお前のことを信用してねぇわけじゃねぇぞ?きっと死ぬほど疲れるだろうから甘えておけ。」
私の想いを見透かされているような物言いにドキッとしたが、理由を聞くとなるほどと納得できたのでコクンと頷いた。
「…本当は約束なんて無効だ!って言いてぇところだが、アイツに一日経って"やっぱなし"とか言ってみろ。無言でにこやかに毒でも送りつけてきそうだからな。」
「えぇ?そ、そんな…優しい人でしたよ?」
「いや、アイツはやる。絶対にやる。」
遠い目をして心底嫌そうな顔をしている宇髄さんは帰るまでしこたま文句を垂れるが、なんだかんだでやりたいと言ったことはやらせてくれる気がした。
彼はとても優しいから。一緒にいてそれだけは揺るがない事実で、そんな彼だから私は役に立ちたいと思ったんだ。まぁ、きっかけは鎹鴉だけれども。
頼られたいと思って、自慢の継子だって思ってもらいたくて…。
だけど、この頃から継子扱いされるのがどこか不満に感じ始めていたのは間違いなくて、私は気付かないふりをしていたけど、それがなぜなのか分からずに知りたいと言う気持ちもあった。
──翌日
言われた通りしのぶさんのところに行くと紹介された小さくて可愛らしい女の子に驚愕した。
「こんにちは。栗花落カナヲです…。師範からお話を聞きました。よろしくお願いします。」
きっと鬼殺隊は顔面接があるんだ…。そうでなければこんな美女ばかり揃うだろうか。
暫く放心状態でジロジロと顔を見つめる私は不審者そのものだ。隣にいたしのぶさんに「もしもーし、起きてますか?」と声をかけられるまで私は呆けたまま阿呆面を晒す羽目になった。