第4章 実力試験は実戦で
「あの、陰陽師のことも成り行きで言ってしまってごめんなさい。宇髄さんにはあれほど口止めしたのに…」
「まぁ、言わざるを得なかったんだろ。仕方ねぇよ。だが、鬼殺隊となった暁にはそれも柱には伝えた方がいいかもしれねぇな。呼吸使えねぇのに鬼狩りができる理由をさ。」
「た、確かに…。」
宇髄さんは困ったように笑うとわしわしと頭を乱暴に撫でた。髪もぐちゃぐちゃになるし、若干痛いけどその大きな手が自分にとってどれほど安心するか私は知っている。
暫くそのまま彼のなすがままにされていると、髪を直すように整えてくれて、再び手を引き家路につく。
「…聞くけどよ、何で鬼殺隊に入りたいわけよ。そんな素振り見せてなかったろ?」
「え?あー、えっと…。」
「はっきり言えばずっと一緒にいるのに今日初めてそんな想いを聞かされてちょっと悔しいわけよ。しかも胡蝶から。」
「……宇髄さん…。」
言えない…。
鎹鴉が欲しかったから、なんて。恥ずかしくて言えない。
鬼殺隊に入りたいと思ったのなんてさっきが初めてだし、その理由が鴉が欲しいなんてことをこの場で伝えたら絶対呆れられる…!
「あの、しのぶさん、の継子のカナヲさんって方が最終選別というのを受けるって聞いて…。」
「あー、アイツな。おぅ、それで?」
「私は…宇髄さんに守られてばかりで継子として、情けないな…って思って、折角鍛錬してもらってるのだから自分も受けられないかしのぶさんに聞いたんです。」
「はぁ?別に情けなくなんかねぇだろ。お前は十分強くなってる。ただ俺のとこにいる以上、継子の面倒見るのは当たり前だろ。」
さも当たり前だと言ってくれる宇髄さんに嬉しいはずなのに少し胸が締め付けられる。継子の面倒を見るのは当たり前。
もちろんそれは嬉しいし、ありがたいことなのに…。この時の私は何でこんなに変な気持ちになったのか分からなかった。
継子なのに継子と言われたことに少しだけ不満のような…。そんな変な気持ちだったから。