第4章 実力試験は実戦で
最終選別の話はほの花にしたことはない。
それどころか鬼殺隊のことは敢えて触れないようにしてきた。
それは遠回しにほの花にあまり関わってほしくなかったからだ。
俺は柱である以上、いつでも死と隣り合わせだ。
しかし、ほの花にはそんなことして欲しくなかった。
隠れ里は全滅してしまった中で生き残ったのだ。その命を大事にして欲しかった。
できればそれを俺が守ってやろうと本気で思っていたから。
胡蝶の鎹鴉の"艶"がほの花とお茶してもいいか聞きにきた時、不死川の時と違って相手は女だからとタカを括っていた。
たまには女同士での茶会は楽しいだろうと軽い気持ちで考えていたのだ。
それが蓋を開けてみればどうだ。
不死川の時の方が良かったではないか。
ずっとこの手で大事に守っていこうと決めていた可愛い可愛いほの花をよりにもよって最終選別に送り出さないといけなくなるとは夢にも思わなかった。
「…あの、宇髄さん…。怒って、ますか?」
遠慮がちに後ろで呟いたほの花の声でハッとした。胡蝶の家を出てから手を引っ張って歩くこと数分。
全く喋らない俺にほの花を怖がらせてしまったかもしれない。
「悪ぃ。いや、怒ってねぇよ。悪かったな。最終選別のこと教えてやらなくて。」
「え?!いや!宇髄さんは悪くないです!私が…勝手に…。」
申し訳なさそうに下を向く彼女に立ち止まって頭をポンと撫でてやる。
胡蝶の言うことも一理ある。ほの花がやりたいと言うならば"師匠"としては背中を押してやるところだ。
"師匠"としてならば。
俺はコイツをそれ以上の感情で見てしまっているからこんなにも嫌なんだ。万が一のことを考えたら怖くてたまらない。
そうだとしてもほの花は人形じゃない。生身の人間だ。自分の考えも感情もある。
俺がそれを制限する資格などない。
「死んだらぶっ殺すからな。」
「日本語物凄くおかしいですが、大丈夫ですか?」
可愛い子には旅をさせろとはよく言うが、こちとら可愛すぎて本当は旅なんてさせたくもねぇ。