第4章 実力試験は実戦で
重苦しい空気を破ったのはやはりにこやかな表情のままのしのぶさんだった。
「はーい。お話し中すみません。もし良ければうちのカナヲと共同鍛錬でもしませんか。」
「共同鍛錬…だと?」
しのぶさんの提案は寝耳に水でそんなことまで先ほど話せてなかったのでちらっと宇髄さんの顔を見る。
「はい。うちのカナヲは呼吸も使えますし、一緒にやっておけば最終選別の時、協力し合えるじゃないですか。カナヲが残れないなんて思ってないですけど、ほの花さんが協力してくださるなら安心できるので。」
「…共同、ねぇー。俺だって別にほの花が残れねぇなんて思ってねぇよ。ただ、心配なだけで。」
「じゃあ決まりですね!ほの花さん、明日の午後に家に来てください!お昼ごはんも一緒に食べましょう?」
「っておい!俺は了承してねぇぞ!勝手に決めんな!」
柔和な話し方の割にはぐいぐいと話を進めるしのぶさんにあの宇髄さんがタジタジになっているのが何だか新鮮だ。
でも、どちらもわたしのためにこうやって話してくれてると思うと有り難さと申し訳なさが交錯して変な気持ちだ。
「どうしてですか?鬼殺隊の隊士が増えることはお館様のためでもあるんですよ。ほの花さんはとても立派な志を持っていて師匠として背中を押して褒めてあげるべきです。」
「はぁ…、わぁーったよ。…好きにしろ。ほの花、帰るぞ。」
またしてもしのぶさんの巧みな話術で根負けした宇髄さんが私の手を引いて部屋を出る。
玄関まで見送りに来てくれたしのぶさんが口真似だけで"よ か っ た で す ね "と言ってくれたので、慌てて会釈すると胡蝶邸を後にした。
外はもう陽が落ちて真っ暗になっていた。
冬の寒さが厳しくなってきた頃だったので肌に凍てつく空気が突き刺さるようだが、繋がれた手が温かくて何も話さない帰路であっても気持ちはとても落ち着いていた。
宇髄さんの自慢の継子にはなるために頑張ると決めたのだ。
あそこまでしのぶさんが協力してくれたのだから恩を仇で返すことはできない。