第24章 情欲は無限大※
まず向かうのは軽傷の奴らの部屋。
俺が入室すると談笑していたのにその場で立ち上がって直立不動。
流石に怪我人に柱を敬えだなんてことは出来ないし、俺も弁えてるので「寝てていい」と伝える。
それでも軽傷だからなのか、何度めかで漸くベッドに横になってくれたのでそいつらと向き合った。
「なぁ、うちの継子に喧嘩売った奴知らねぇ?」
「…え、神楽さん、にですか?…じ、自分は…知りません。」
殆どの奴らが知らないと言っているが、そのうちの一人だけが青い顔をして固まってしまっていた。
(…コイツか?)
早々に見つかったのならば幸運だ。
俺は何も言葉を発しないそいつの目の前まで行くと置いてあった椅子に腰掛けて目線を合わせた。
「…何か知ってんのか?」
「ひっ、や、…じ、自分じゃ、ない、です!!」
「…っつーことはもう一つの部屋のアイツか。わーった。」
「お、音柱様…!!あ、アイツは本当は気のいい奴で…!神楽さんに申し訳ないことをしたと、思いますが…どうか、情けを…!」
「おいおい、俺はそこまで人でなしじゃねぇよ。安心しろ。暴力沙汰にするつもりはねぇから。」
柱を実際見ることすら一般隊士ではなかなかないこと。それなのにいきなり俺がこんなところに現れたら驚くに決まっている。
安心させるように肩をトントンと叩くと、部屋を出て教えられたもう一つの部屋へと向かった。
そんなことよりアイツらの顔が怯えきっていたのに苦笑いしかない。そこまで怖い顔をしていただろうか。今から会う奴を殺すとでも思っているとしか思えない。
「流石にそんなことするわけねぇだろ。ったくよぉ。」
不満が思わず口から漏れたが、言われた部屋の前まで到着すると無遠慮に「入るぜー。」と入室した。
そこにいた男の俺が入った瞬間の顔ときたらこの世の終わりみたいな絶望的な顔をしていてまたもや苦笑いしかない。
そしてベッド上で布団に頭を擦り付けるように下げて「申し訳ありませんでした…!!」と泣きながら謝ってくるものだから完全に出鼻を挫かれた。
暴力沙汰にするつもりはなかったが、先に泣かれたら流石の俺も良心が痛むというものだからだ。