第24章 情欲は無限大※
──ほの花さんはあの日教えてくれた。僕は一人じゃないって。
ほの花さんってやっぱり掴みどころのない雲みたいな人だ。
突然、手を繋がれたかと思うと御礼を言われた。それが先ほど口説かれていたあの隊士から助けたことだと言うことはすぐに分かったけど、呆然と彼女を見つめることしかできない。
大した物言いもできない僕に対して愛に溢れているだなんて驚いたけど、その目は澄んでいてそこに嘘やお世辞は感じられなかった。
困っていた彼女を助けたのは宇髄さんの継子だったからという理由が大きい。
彼女が傷つくと彼に申し訳ないからだ。
それなのに継子とか、そんなことは抜きにして、一人の人間として僕と向き合ってくれているほの花さんに困惑していた。
久しぶりに誰かと手を繋いだことで顔が熱くなったし、むず痒い感情に唇を噛んだ。
確かにこの瞬間、僕は一人じゃなかった。
手を繋がれたら、いろんな人のことを思い出した。
お館様は僕のことをいつも気にかけてくれていたなぁ…とか。
宇髄さんも頭をわしゃわしゃしてくるけど、温かかったなぁ…とか。
胡蝶さんは記憶喪失を心配してくれたなぁ…とか。
他の柱も僕のことをいつも気にかけてくれていた。
そして、いま目の前にいるほの花さんはそんな僕を温かくて見つめてくれていて、やっぱり泣きそうになってしまう。
でも、泣くのは恥ずかしいから彼女の手を握り返した。僕よりも細くて少し小さい手がまるで僕を守ってくれているように感じる。
「…弟、ならその呼び方変じゃないですか?」
「あ…!そっかぁ…。あ!それなら無一郎くんって呼んでもいいですか?」
「どうぞ。あと敬語も変ですよ。弟なんですよね?僕。」
「確かに…!じゃあ無一郎くんも私には敬語使わなくていいからね!あ!それと今度家にごはん食べに来なよ!みんなで食べると美味しいよ!」
その日、屋敷に送るって言ったのは僕の方なのに彼女の温かさにずっと守られているようだった。
花のように笑うほの花さんにつられるように頬が緩んでいたのに気付いたのは家に帰ってからで、鏡を見て驚いたけど一人じゃないって思えた。