第23章 早とちりも程々に※
何やら宇髄さんは妊娠していることを楽しみにしてくれているようで、めちゃくちゃ居た堪れない。
こうなったらいっそのこと妊娠していてくれないだろうか。
経口避妊薬と言っても初めて作ったのだから効果があるとは必ずしも言えないし、あの吐き気と微熱も早すぎる悪阻であって欲しい…!
私のことを後ろから抱きしめながら横になると、お腹を撫でてくれる宇髄さんの手が温かくて余計なことをしなければ良かったと心底思った。
「あー、楽しみだなぁ…。」
「そ、そだね〜。」
あああああああ!!!!
私の馬鹿!!大馬鹿もの!!!
こんなに楽しみにしてくれるなんて嬉しいのに嬉しくない…。
こう言う時に限って月のモノがすぐ来てしまうんだ。
こう言う時に限って…!
世の中、思い通りにはならないものなのだ。
だから、昼ごろに嫌な腹痛で目が覚めた時は色んな意味で顔面蒼白になった。
経血が出てくるような下腹部の感覚に私を抱きしめながら寝ている宇髄さんの腕を退けて、厠に急いだ。
(……だよね…。)
私は厠の中で頭を抱えた。
どろっとした経血が流れ落ちるのは好きじゃない。出来たらこんなもの来て欲しくない。
お腹は痛いし、腰も痛いし、体も怠いし。
まだたった一回じゃ、薬の効果とは言いにくいが、普通に月のものが来てしまった。
内側から突き刺すような痛みに腹部を抱えながら厠から出ると「大丈夫か?」という声が降ってきて、驚いて見上げる。
「う、宇髄さん…!」
「どうした、顔真っ青だぞ?」
「え、あ、や、その…、お腹が…痛くて…。」
「は?ちょ、おい。抱えるぞ?!とりあえず着替えて胡蝶のとこ行くぞ。」
慌てたようにそう言う宇髄さんにもうこれは観念するしかない。抱き上げられるほどのことでもないので断っているのに問答無用で抱えられて部屋に連れ戻されると羽織を出してきてくれるが、それを丁重に断った。
「…あの、大丈夫だよ。しのぶさんのとこ行かなくていいから。」
「な、駄目だろ!すぐ行くぞ!腹痛ぇんだろ?」
「うん、痛いよ。」
「だったらすぐ…!」
「月のモノが来たからね。」
「………は?」
「だから…、月のモノが来ました。」
「はぁああああ?!」
宇髄さんの絶叫が屋敷中に響き渡ったかと思うと「嘘だろ…」と天を仰ぐ彼を見て、それはもう居た堪れなかった。