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焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第4章 病魔【P128 ~ 🫖*】


午後三時半頃。

さく、さくり。長靴の踵が草木を踏みしめていく。



彼女を自室へと送り届けたボスキは、

ひとりデビルズパレスを囲うように鬱蒼と茂る森へと入っていった。



気づかれぬようにそっと屋敷を抜け出し、森の内奥へとつま先を目指す。



先刻の彼女の様子が気がかりではあったが、

本音を言えば、早く一人にならなければいけなかった。




アモンとラムリに街へと連れ出され、

その際に天使に遭遇したのちの出来事は、屋敷を抜け出す前にアモンから聞いている。



『主様、この世界に来る前に天使に遭ったって……、

その時のことを話す主様は………まるで、』

彼はヴァリスのことを酷く案じていた。

その時のことを語る彼女は、厭わしい過去を視ているようだったと。



主様に寄り添えないなんて執事失格っすね、と悔いているアモンに、

ボスキは無言でその肩に二度手を打ち付けただけで、あえて慰めの言葉はかけなかった。



(ヴァリス・マリアドール………。)

胸のなかで反芻する。

ここで彼女をみつけた時、その稀有な容貌が彼の目を引いた。



腕に抱えた時、あまりの線の細さに驚いた。

華奢で儚げで、少し力を入れたら折れてしまいそうで………。




そして明るく朗らかな仮面の下に、荒涼とした寂した心を隠した少女。




中庭で歌っていたその姿は、陽の光に照らされたその横顔は、

柔く、慈愛に溢れていて、本当に美しかった。



彼女はそんな事ない、私には似合わない言葉だと、

ほとんど痛みを感じているような顔で猛烈な否定をするのだろうけれど。



(あんなに美しいのに、そう称されることを嫌っている女………。)

その瞳に隠している苦悩も、気高さに塗り固めた本当の姿も、

いつの日か分かち合えたらいい。



そう思考に載せながら、ひたすら足を動かしていると。
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