第4章 病魔 前編
「っ……笑ってくれるなよ」
朱の差した頬。その内を気恥しさが駆け巡った。
「ご、ごめんなさい。でも……なんだか、」
尚も微笑うその姿に、彼の両眼がふっ……と和らいだ。
「やはり俺は、その笑顔が存外気に入りのようだ」
心からの言葉に、今度は彼女が照れる番で……。
「…………!?」
「顔が赤いぞ、主様?」
ニヤニヤと、狡猾が滲みでる笑み。
仕返しとばかりにからかわれ、ふいと視線を解いた。
「もう……!」
ぽかぽかと身体を叩いてくる彼女を抱きしめる。
(あんたといると、欲張っちまいそうになる)
稀有な色彩を纏う、儚く脆い少女。
諦めた筈の願望いを、とうに棄てた感覚の意味を、
もう一度追い求めてみるのも悪くねえかもな。
口にできぬ想いを抱いて、ただその腕に包んでいた。