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焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第4章 病魔 前編


「ボスキ……。」

紺碧の髪を揺らしながら、彼が近づいてくる。

何だか気恥しくなって、視線をさ迷わせる彼女に、ボスキはニヤリと笑いかけた。



「悪ぃな。昼寝していたらあんたの声が聴こえたから」

ガシガシと頭を搔きながら告げる。

それからシロツメクサの指輪に視線を留めた。



「主様……その花が好きなのか?」

うん、と彼女が唇をひらく。



「祖母と過ごした森にたくさん咲いていたの。

とても大切な、思い出の花よ」

そう言って微笑う瞳が優しい煌めきを宿している。




けれどなぜか、そのさまが。

思い出を懐かしむというより、遠い記憶を追い求めているように視えたのだ。




伸ばした指がその目元をなぞる。

今にも涙しそうに熱くなっていた眦を、ボスキは労わるようにそっと撫でた。



「ボス、キ……?」

彼女は吐息を封じて、みるみる真っ赤になったけれど。

そんなヴァリスに、彼は微笑いかけた。




「あんたの記憶は、悲しいばかりじゃないだろ?」




「!」

みひらく瞳。

その視線の先で、ボスキは優しい笑みを浮かべた。



「あんたの眼は優しい色をしている。それは幸せな記憶がある奴のするそれだ。


だから、まぁ……なんだ、あまり悲観するものじゃないと思うぜ」


みずからの後頭部に指をかけ、途切れがちに告げる。

そのぎこちなさに笑みを零すと、彼は少しだけ睨んできた。
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