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焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第4章 病魔 前編


その頃、ヴァリスは———。

仕事に戻ると辞していったベリアンを見送ったのち、中庭へと降り立っていた。



温かな陽の光が、天蓋となって彼女を柔らかく包み込んでいる。

コツ、コツ……と密やかに長靴を打ち鳴らしながら歩いていくと。



ピチチチ……と飛んできた小鳥たちがその指に留まり、嘴で彼女の手をつつく。

そのうちの一羽がシロツメクサの花の茎をその手にのせて、知らず笑みが零れた。




「……私にくれるの?」

うなずくように囀る小鳥たち。

小さくとも可憐なその花に、その唇が笑みに染まる。



ふわりとした羽を撫でていると、自然とあの歌を口ずさんだ。



(おばあちゃんと過ごしたあの森にも、たくさんのこの花が咲いていたね)

純白の花が一面の絨毯のように咲き誇る、美しい花の園。



花冠を作り、マリスと戯れて。

楽しかった思い出は、その美しさほど鮮烈で………。



歌い終わると、背後からこちらへと向かってくる靴の音。

その髪をなびかせふり返ると。
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