第4章 病魔 前編
「……これは」
ルカスを呼んで、ふたたび研究室へと戻ったふたりは揃って絶句する。
そこは先刻までの有様が、まるで嘘のように元通りに戻っていたからだ。
ただひとつ、相違点は。
「このしるしは………、」
床の中央に、引きちぎられた薔薇の花弁で描かれていたのは、
ヴァリスの背にあるあの傷痕で………。
片翅が無惨に毟りとられたような、痛ましくも美しい傷痕。
しゃがみ込み、花弁にふれると。
「!?」
さらさらと、風に舞い散る灰のように、形なく朽ちていった。
「どうしますか、ルカスさん?」
ベリアンの言葉に顎に指を当てる。
「一先ずミヤジも呼んで話し合おう。
私も彼とキミに伝えなければならない事があるし………ね」
「わかりました」