• テキストサイズ

焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第3章 捻れた現実


「皆のこと、悪く言わないでください」

棘も刃も纏わない凛とした声音だった。

それでもたしかに宿る怒りに、そこにいる誰もが気圧される。



「なっ……! でも、あんたが———」
動揺している彼らの眼に、毅然とした表情の彼女が映る。



「本当の姿を知りもしないで、悪く言うのは子供のすることです。


あなた達の勝手な思い込みや先入観だけが、正しいなんて思わないで」


したたかに彼らを見返す。

しばし瞳を合わせたのち、ややあって、先に視線を解いたのは彼らのほうだった。



「お待ちどおさま、お前さん」
包みを差し出す店主の手からそっと受け取ると。



「いこう、ふたりとも」
つぶやき、固まっていた彼らの横をすり抜けた。




カツ、カツ……と響く長靴に、我に返った彼らが言葉を投げつける。




「悪魔執事どもにはお似合いだ、聖女の面を被った女狐め……!」

その声を無として、ただ歩みつづけた。
/ 143ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp