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焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第3章 捻れた現実


がやがやと行き交う影の間を縫うように、彼女の手を引く。

初めて目にするものすべてに、ヴァリスは瞳を煌めかせた。



深青の瞳が、温かくゆらめいている。

そのひかりに惹かれながら、ラムリはある店へと入った。



「洋菓子店 スピカ」。

古びて、すこしばかり錆びた金文字。

カララン……と扉につけられた大ぶりの鈴が、密やかに揺れた。



「いらっしゃ………、」

奥の部屋から出てきた店主が、三人のおもてを見て顔色を変える。

明らかに肩を強張らせつつも、瞬時に笑みを貼り付けた。



「何をお探しで?」



「フルーツタルトをホールで」

ラムリの一言に、その眉が訝しげに寄る。それでも笑んだまま頷くと。




「へい、………毎度」

店の奥へと消えていく。

既に店内にいた他の客も、口元を隠して口々にささやき合いはじめた。
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