• テキストサイズ

焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第2章 主人として


「どうぞ、主様」
ベリアンに椅子を引かれ、「ありがとう」と掛ける。



「今日は白パンと野菜スープ、トマトサラダとプディングをご用意しました」

『お口に合うと嬉しいです!』。微笑んだロノが説明すると。




ぐーーーきゅるるるる………。
と、誰かのお腹が鳴った。



「おい……バスティン、」

すこし呆れたように彼が後方を見やる。その視線の先に、もう一人の一階に住まう執事。



「……生理現象だ」
棘を含んだ視線に臆することなく、冷ややかに見返す。



「だからって……少しは我慢しろよ」



「そう言うあんただって、味見と称して何度も食べてただろ」

反撃の一言に、ぴしっと音を立てて、ロノの身体が凍てつく。

けれどすぐに我に返り、バスティンを睨みつけた。



「それを言うなら、お前だって昨日——」

言い合いがはじまりかけた二人を引き離す、ダークグレーの手袋に包まれた掌。



「あらあら……。おふたりとも、そこまでですよ」

『主様の御前です』。

そう言って、宥めるようにそれぞれの肩に手を置く。



「主様、失礼いたしました」

胸に手をあて謝るベリアン。ばつの悪そうに黙っていたふたりを柔くみつめた。
/ 175ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp