第2章 主人として
コツ、コツ……とふた組の足音が響く。
窓の外からは温かな陽が差しており、彼女の横顔を柔らかく照らしていた。
そのおもてを見つめながら、先刻彼女が見せた表情を思考に載せる。
(なぜ……主様は、)
『美しい』と口にした時、あれほど冷たい眼をしていたのだろう。
その光は、まるで———。
(その御姿を賞賛されること自体を、嫌っているみたいだった)
雪白の肌に、大きなアウイナイトの瞳。
稀有なる銀の髪の内側に白青色のインナーカラーの入った髪。
華奢で儚げな姿。紅を載せずとも色鮮やかな唇。
誰もを魅了し、鮮烈な炎のように、記憶へとその姿を刻みつける。
(なのに、なぜ———。)
先刻みせた表情が、一瞬にして凍てついたその瞳が、記憶のなかで錆と化す。
聴かれたくないこと、………触れられたくないこと。
そういった類の事情なのはすぐに分かったから、それ以上の問答は憚られた。