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焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第4章 病魔【P128 ~ 🫖*】


「これで同盟は締結された。細やかな事項はルカスに聞いてくれたまえ」

傍らの部下から書類を受けとり、その唇に笑みを刷く。

その宣言の直後、フブキが席を立った。



「ユーハン、往くぞ」

ふたりの護衛剣士のうち、年若いほうの男性に告げる。



「はい、フブキ様」

無機質な声で答え、主人に続いて立ち上がった。

フェアリーストーンの瞳は鎧のように感情のひかりが伺えず、ヴァリスは思わず彼をみつめる。




刹那、こちらへと瞳を巡らせた彼と視線がかち合う。




「!」

その瞬間、彼は瞳を解いて、密やかに微笑んだ。



『では、失礼いたします……ヴァリス殿』

声なき言葉。彼女にだけわかる程度の微笑。

瞠目する瞳を穏やかな眼でみつめた後、さっと身を翻した。



ヴォールデン家当主一行とポートレア家当主一行も辞していくなか、

ルカスのほうをふり返った時、徐に声をかけられる。



「ヴァリス、少しいいかな」

声の主はフィンレイだった。先刻と同一の笑みをのせて、こちらを見ている。



「は……はい」

立ち上がりかけた腰を戻し、黒曜の瞳を見返す。

その視線の先で、再度唇をひらいた。



「フブキという男に気をつけるといい」

穏やかな眼。されど混濁のヴェールに覆い隠された瞳。

問うように見交わす双眸に、彼はさらに続けた。



「先程は牽制したが、あの男がこのままこの同盟に甘んじる訳がないからね」

諭すような口調に、ヴァリスはその眼をまっすぐに見つめて告げる。



「ご忠告ありがとうございます。でも……私は、」

清水のように透んで、だのにたしかな意志の滲む声音。




その両目を見つめたまま、ありのままの心を口にした。




「自分で視て、触れて、感じたことを信じているんです」

瞬間、長剣の塚にふれかけた部下——視察隊長——を制す。
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