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焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第4章 病魔【P128 ~ 🫖*】


「辞めたまえ。私の執務室を女人の血で汚すのか?」

その言葉に唇を噛みしめる。



「で、ですが、フィンレイ様………ッ」



「黙れ。女人の血は見たくないと言っている」

冷たい眼に見据えられ、ひゅっ………と吐息を封じる。

不満そうに唇を引き結んだのち、ゆっくりと手を下ろした。



「これが君が彼らに慕われている理由、か」

わずかな一言は彼女にはとらえることができなくて、戸惑った瞳で見つめる。



「………?」



「いや、気にしないでくれ。

呼び止めてすまなかった、今日は協力いただいて感謝する」

ふいと視線を解きながらつぶやく。




テディに目配せすると、
心得たように「本邸の門までお見送りしますね」と先導した。





「失礼します、フィンレイ様」

深々と一礼したのち、その背を追いかけていった。



静かに扉が閉まり、いくつもの足音が遠ざかっていく。

それらを確認したのち、フィンレイは薄い唇をひらいた。



「フブキの動向は?」

その言葉に瞳を冴え渡らせ、こちらを見つめる。

彼の薄い青の瞳と、みずからの黒曜の瞳との視線とが交わった。



「今のところ目立った動向はありません。ただ———、」



「何だ?」



「私の放った密偵によると、日に日に悪魔執事の主への憎悪を募らせているようです」

コツ、コツ……と窓辺へと近づく。

既に中庭へと降り立った一行が、テディと何かを話している光景を見止めた。



「あの男は全く……。」

傍らの部下がつぶやく。

忌まわしげに唇をかみしめる彼を、感情の視えぬ黒曜にとらえた。



「放っておけ。彼女の為人を探るには絶好の機会だ」

中庭では、テディと楽しげに会話している彼女の姿。

綻んだ唇は美しい弧を描き、その紺碧色の瞳は温かさをはらんでいた。



(ヴァリス・マリアドール………。)

声なき言葉で反芻する。



(私が予測していた姿とは、まるで違う少女のようだ)

稀有なる容色をもつ、儚げな空気を纏う少女。

けれどその容貌に反して、勝ち気でしたたかな内面をもつ少女。



(いずれ、あの男は何らかの命令を下すだろう)

無論、警戒を怠りはしないが………。



「引き続き、サルディス家の内部を探るように」



「かしこまりました」
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