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焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第4章 病魔 前編


「——それじゃ、あなたは異世界からいらしたんですね」

陽に照らされたテディの瞳が快活に煌めく。

浮かべた笑みは友好で人懐っこくて、こちらの緊張を解きほぐした。



「えぇ、森のなかで倒れていたところを、皆に救い出されたんです」

穏やかさをはらんだ瞳がその時を反芻するようにゆらめく。

その眼はその日を懐かしむように優しく和み、そのひかりに惹き込まれた。



「どんな場所……だったんですか」

その言葉に深い青の瞳が冷たく淀む。

一瞬にして凍てついた瞳に、みずからの軽はずみな言動を悔いた。




「ここより醜くて冷たい世界———とだけ言ってきますね」

その瞳が混濁のヴェールに覆われる。

そんなさまにさえ、テディの眼を惹き付けた。




「テディさん」

見かねたルカスが唇をひらく。

やんわりと咎めるような口調に「大丈夫だから」とつぶやいた。





やがて見えてきた本邸の門に、ヴァリスはこちらを見上げて微笑んだ。




「送ってくださってありがとう。失礼します」



「はい、………また」

馬車に乗り込む儚い背を見守る。

帳をあけたヴァリスは、彼に向かい微笑って手を振った。



手を振り返すと、馬車が動き出す。

それが見えなくなるまでテディはずっとみつめ続けていた。



「……そろそろ戻らないといけないよな」

エントランスへと向かうつま先。




その内では彼女がみせた様々な表情が描かれていて、頭を降って振り払った。




思考から追い出し歩みはじめる。

冷えた木枯らしが彼を嗤うように吹き付けていた。
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