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焦がれた恋情☩こころ☩に蜂蜜を【あくねこ長編】

第4章 病魔 前編


(心配、してくれているの……?)

自分の杞憂で終わりますように。心のなかでそう祈る。




生成り色のシュミーズ姿となり、彼の手を借りながら、黒曜のドレスに身体を押し込んだ。




それは華やかさを滲ませつつも、何処か礼装めいた雰囲気の衣裳だった。



立て襟を薄鈍色のレースで飾り、デコルテからウエストにかけては銀色の釦が並んでいる。



袖は腕の線にぴったりと寄り添い、袖口には襟元と同一のレースがちらりと覗く。



マーメイドラインを描くスカート部分には、

ところどころにきらきらと煌めく水晶の粒が織り込まれ。



その裾はフリルとなってひらひらと揺れており、

菫の花の刺繍がなされた銀色のレースが控えめに煌めいていた。



「主様、こちらのローブもお召しになってください」
その上から漆黒のローブを纏う。



地は黒曜でも、肩の装飾や縦にふたつずつ並んだ金の釦、


フード部分と肩口から広がるケープ、


そして身体の正面でゆるやかに垂らされた裾に施された金色のモールで、地味という印象はない。



「このローブって………、」

思わず口にすると、鏡ごしに微笑むフルーレ。



「グロバナー家の会議に出席するための礼装です」

彼の手で編み込みを解かれ、ふわりとややクセのある青灰色が踊り流れる。



すっ、……すっ………と櫛ると、

顔の両サイドの髪を三つ編んで、ドレスの共布のリボンを飾った。



「終わりましたよ」



「…………………………。」

ぼんやりと揺蕩う思考を抱いて、その瞼を伏せた。灰色の長い睫がわずかに震える。



「主様……?」

その声に思考を覆っていた靄が消え去る。



「ううん、何ででもない」

微笑って見せるけれど、その唇は何処か冷たいものを滲ませていた。
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