第2章 寮の怪異事件
そのまま、ベッドに──私のいた場所に、彼も一緒に腰を下ろす。
「え、えっ……!? ちょ、ちょっと待っ──」
「……落ち着け。手、貸して。……お前、冷えすぎてる」
手のひらを、そっと包まれる。
それだけで、体の奥がじんわりとあたたまってくる気がした。
「怖いの、顔に出てんぞ。……ったく、そういうの隠せないんだから、強がるな。」
伏黒くんが、少しだけ笑った。
いつもの無表情じゃなくて。
ほんの少し、困ったような、優しい顔で。
(……なんか、すごく……安心する)
このまま、隣で一緒に寝てくれないかな。
温かくなった手と心で、そんなことを思ってしまう。
「眠れるか」
「え、っ」
「夜、眠れそうか?」
「あ、うん、ありがとう」
「お前は、何も考えずに目を閉じてたらいい。考えるのは、俺がする」
そう言って、ふわっとベッドの掛け布団をかけられる。
「もう気配がない。寝ろ。朝まで、そばにいる」
(……そばにいる、って)
そんな言葉を、誰かに言われたのは、いつぶりだろう。
胸の奥が、静かに、ぽうっとあたたかくなる。
「……うん。ありがとう、伏黒くん」
「……ああ。おやすみ」
伏黒くんは握っていた手をスッとはなし、
また自分の布団へと入って行った。